『FF-TCG』描き下ろしイラスト紹介
イラストレーターインタビュー
第8回:齋藤茜
世界中で遊ばれているアナログTCG、『ファイナルファンタジートレーディングカードゲーム(FF-TCG)』には、ファイナルファンタジーシリーズからたくさんのキャラクターやモンスターが登場しています。懐かしいイラストがカードになって登場している一方で、実は、『FF-TCG』のために描き下ろされたオリジナルのイラストが多数収録されています!
本特集では、収録されているイラストをイラストレーターへのインタビューを織り交ぜながらご紹介します。さらに、イラストの一部を壁紙としてFFポータルアプリにて配信いたします!
『FF-TCG』向けに『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル エコーズ・オブ・タイム』の描き下ろしを担当されている齋藤茜氏に、今回の描き下ろしについてお話を伺いました。
齋藤茜プロフィール:
FFシリーズでは『ワールド オブ ファイナルファンタジー』にてミラージュやガジェットのデザインに携わる。現在は『ドラゴンクエストX オンライン』にて背景アートをメインに担当。
―まず齋藤さんご自身のことについて、伺えたらと思います。これまでのお仕事について教えていただけますでしょうか。
齋藤:スクウェア・エニックスへの入社は約6年前で、それまでは別の会社で子供向けゲームのキャラクターデザインのお仕事をしていました。小さな会社だったのでキャラデザインに留まらず、アート周り全般を任されていたのですが、好きなゲームの会社で働きたいという気持ちが強くなり、スクウェア・エニックスに転職しました。配属された先が、大好きだったゲームのメインデザイナーの泉沢さんの下で本当にびっくりしましたが(笑)。
―なるほど、もともとスクウェア・エニックスのゲームがお好きだったのですね。
齋藤:はい、子供の頃は兄のお下がりでファイナルファンタジーシリーズやドラゴンクエストシリーズをプレイしていました。初めてプレイしたFFは兄に手伝ってもらっての『ファイナルファンタジーIII』ですが、初めて一人でクリアしたのは『ファイナルファンタジーIX』です。今は『ファイナルファンタジーXIV』をプレイしています。
―入社後はどのようなお仕事をされたのでしょうか。
齋藤:入社して最初に関わったのは『ワールド オブ ファイナルファンタジー(以降、WOFF)』でした。驚いたのは、要求されるクオリティのレベルが段違いだったことですね。それまでゲームのデザインについて教えてもらう機会もなかったため覚えることがたくさんで毎日あたふたしていましたが、泉沢さんは本当にいいものはいいね、ダメなものはダメとはっきり言ってくださる方だったのであまり迷うことはなかったです。わからないことを聞けば、答えそのものじゃなくヒントをくれる感じでした。自分の答えを見つけて納得しながら進められたのは本当にありがたかったです。
『WOFF』では主にモンスターのデザインを担当しました。モンスターのデザインというものも初めてで、最初にデザインしたミミックはすごくダメ出しを受けました。凶器やら罠やら盛り込みすぎたせいで「嫌いじゃないけどこわい」、と(笑)。何度目かのリテイクののち、ドリルツインテールのあの姿に落ち着きました。他にも『WOFF』ではムーやユニコーン、ミストドラゴン、トンベリのデザイン、亜種のカラーリングも何体か担当しました。
モンスターは最終的には3Dモデルに落とし込まれていくのですが、そこの調整は泉沢さんがまとめてやってくださっていました。開発会社のトーセさんのFF愛も技術も素晴らしく、私が描いた落書きから動きをつけてくださったりして良いものに仕上げてくださいました。
―現在はどのようなお仕事をされているのでしょうか。
齋藤:『WOFF』の開発が終わったところで泉沢さんの下での仕事がひと段落しまして、次に『ドラゴンクエストX オンライン(以下、DQX)』の背景アートチームに配属となりました。背景アートの経験はあまりなかったのですが、ポートフォリオの中に数枚入っていた背景イラストを見ていただいて作風が合うのでは、と。今はだいぶ『DQX』での仕事にも慣れ、背景以外にガジェット、キャラクターの装備のデザインまで幅広くやらせてもらっています。
―今回描き下ろしをされた『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル エコーズ・オブ・タイム(以下、FFCCエコーズ・オブ・タイム)』のイラストですが、まずどのような経緯で描き下ろしをされることになったのでしょうか。
齋藤:私がはじめて『FF-TCG』向けに描き下ろしたのはベリアウルデ、ノルシュターレン、ウァルトリールの3人で、泉沢さんのところに話がきたものの、元のデザインが泉沢さんではなく、当時のデザイン担当の方にお願いするのも難しいということで私が描かせていただくことになりました。『FFCCエコーズ・オブ・タイム』はプレイ済みかつ大好きだったので、特に途中困ることもなく描き上げることができました。
―各イラストのポイントなどあれば教えてください。
齋藤:この3人はゲーム内で設定がしっかりある濃い目のキャラクターだったので、その個性や背景を思い起こさせることを意識して描きました。タッチはあまり気にしていませんでしたが、原作が好きだからこそ崩したくなかったので、気持ち原作のイメージに寄せています。それぞれのキャラらしさを意識して描きました。
ベリアウルデは設定上、クリスタルに接すると異形の魔物に姿が変わってしまう体質になっていて、元は理性ある穏やかな人物だっただけに、長年ひとりぼっちで苦しみ続けているキャラクターです。最初に描き始めたこともあり、構図なども含めてまとめていくのに一番時間がかかりましたね。「自分の体だけど自分じゃない」感じを出すために、変異しかけた部分がネバネバのタールみたいにしてみたところがポイントです。
ノルシュターレンは、原作をプレイした方ならわかるあの強烈な歌のシーンを描いています(笑)。あとは泉沢さんのインタビューでも語られていたのですが、ノルシュターレンと師匠のウァルトリールはカードではそれぞれ独立したイラストですが、実は一枚の絵になっています。当時はキャラカードと聞いて背景を白のままにしてしまったのですが、背景を担当するようになってうしろも描けばよかったと後悔していたんです。・・・なので、今回のインタビューを機に、この師弟コンビの一枚絵に背景を追加してみました!
本に挟まっているあのメモは…そう、わかる人にはわかるアレですね(笑)師匠のウァルトリールはノルシュターレンにあまり干渉しすぎず、ただ後ろから見守っている人なので、そっぽ向いているが近くにはいる、というイメージで背中合わせに描いています。最初は個別に描いていたのですが、このふたりの共通点は「博学」ということで、魔導書をキーにして1枚にしたらおもしろくなりそうだと思いこの形にしました。書見台なんかは作中の図書館のダンジョンを意識しています。
―描き下ろしにあたり苦労されたことはあったのでしょうか。
齋藤:苦労は特になかったと思いますね。原作に忠実に、それぞれのキャラクターの設定画を見ながら進めることができたのでそこまで迷うこともなく、自分が好きなゲームのキャラクターを描くことができたのでとにかく楽しかったです。自分で納得がいかず細かい部分の調整はもちろんありました、ノルシュターレンの頭のリボンの位置を最後まで調整していたりとか(笑)。泉沢さんからは好きに描いて良いと言われていたので、本当になんのNGも出なくて、逆に完全に自分の裁量で描いたものなので責任重大だなあと。
―「Opus X」でも『FFCCエコーズ・オブ・タイム』の描き下ろしをされていますが、これはどのような経緯でご担当になったのでしょうか。
齋藤:そうですね、ほとんど前の3枚の流れのまま「次はこれをよろしく」という感じでオーダーが来ました(笑)。FFCCシリーズの4種族のオーダーだったのですが、泉沢さんとふたりで割り振って私はリルティとユークを担当することになりました。ユークは、先ほどの3体を描いていたということもあり、ゲームではリルティ使っていたのでうれしかったです。
―泉沢さんはクラヴァットとセルキーを担当されていましたよね。お二人で示し合わせた点などはあったのでしょうか?
齋藤:衣装や武器はそれぞれの種族の初期装備にしようというところは最初に話して合わせることにしました。個人的には前回背景を入れなかったこともあり、背景を入れて豪華にしたい気持ちはありました。時間にゆとりもあったので、カードイラストの画集やそれまでに出ていた他の描き下ろしカードを見て参考にさせていただいたりしていました。
最初に描いた3人はキャラクターとしての設定がありましたが、今回の種族のキャラについてはプレイヤーの分身なので、あくまで種族としての特徴を描くようにしました。それぞれの得意分野、戦闘スタイルがあるのでそこをかっこよく表現できるように、動きをつけたのも前回とは違う点ですね。あとは、フルアート仕様になると伺ったので通常だと枠に隠れる部分も、ここからしっかり描いています。実際のカードも見せていただきましたが、ホロが良い感じに入っていて素敵に仕上がっていました。
ユークは、最初から描きたい構図も決めていましたね。膨大な魔力を駆使する魔法種族ということで詠唱中の場面を、反射の色が金属に映えるので“ファイア”をチョイスしました。
リルティは、可愛く描くかカッコよく描くか悩みました。でも悩みに悩んだ結果、小さな体でありながら“武”の民であるというギャップがリルティらしさかなと思ったので、最終的にこうなりました。ちなみにユーク(男)とリルティ(女)だったりします。この2種族は性別わかりにくいですけど(笑)。
―今回の描き下ろしで、いつものお仕事と違ったことはありましたでしょうか。
齋藤:いつもやっているデザイン業務と違って、イラストのお仕事はそもそもあまりやったことがなかったんです。デザインでは一枚の絵として描くことはほぼなくて、3Dモデルにおこすことを前提にあくまで構造が伝わるように設定画を描くので結構違いましたね。自分が描いたものがそのままカードになって世に出ていくというところに不安はありました。参戦しているイラストレーターも錚々たるメンバーでドキドキしましたし・・・色々とこれでいいのだろうかという心配はありましたが、その一方で好きなキャラを自由に描けることが何よりうれしくて。そういう点ではただただ楽しんで描いていましたね。
―今後、描き下ろしてみたいシリーズやキャラがいたら教えてください。
齋藤:『ファイナルファンタジーVII』のケット・シーとかレッドXIIIを描いてみたいです!動物(特に獣系)は見るのも描くのも大好きなので・・・召喚獣のイクシオンだったり、フェンリルなんかも描いてみたいですね!
―本当に獣系がお好きなのですね!召喚獣やモンスター、ぜひ描き下ろしで見てみたいです。本日はありがとうございました。
▼バックナンバー
第1回:松田俊孝
第2回:伊藤龍馬
第3回:板鼻利幸
第4回:ロベルト・フェラーリ
第5回:小池紅美子
第6回:オグロアキラ
第7回:泉沢康久
齋藤茜氏描き下ろしの「ウァルトリール&ノルシュターレン」が壁紙になりました!
■デジタルコンテンツ(壁紙)
- アイテム名 : 描き下ろしイラスト『ウァルトリール&ノルシュターレン』壁紙
- 交換条件 : (有効期限内)何度でも
ファイナルファンタジーシリーズに登場するキャラクターや召喚獣を駆使して、1対1で対戦するカードゲーム。お馴染みのキャラクターのカードを集めるコレクションとしての要素だけでなく、ルールはシンプルながら奥の深いゲーム性による、カードゲームとしての面白さが最大の魅力。
公式イラストレーターによる描き下ろしイラストも大好評!