『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第5回:小池紅美子
世界中で遊ばれているアナログTCG、『ファイナルファンタジートレーディングカードゲーム(FF-TCG)』には、ファイナルファンタジーシリーズからたくさんのキャラクターやモンスターが登場しています。懐かしいイラストがカードになって登場している一方で、実は、『FF-TCG』のために描き下ろされたオリジナルのイラストが多数収録されています!
本特集では、収録されているイラストをイラストレーターへのインタビューを織り交ぜながらご紹介します。さらに、イラストの一部を壁紙としてFFポータルアプリにて配信いたします!
『FF-TCG』向けに「ファイナルファンタジーモンスター」の描き下ろしを担当されているスクウェア・エニックスの小池紅美子氏に、今回の描き下ろしについてお話を伺いました。
小池紅美子プロフィール:
FFシリーズでは『メビウス ファイナルファンタジー』にてジョブデザインや、妖精エコーのデザインを担当。FFシリーズの他にも『グランマルシェの迷宮』、『サガ スカーレット グレイス』のデザイン業務にも携わる。
―まず小池さんご自身のことについて、伺っていけたらと思います。スクウェア・エニックスに入社された経緯や、これまでのお仕事について教えていただけますでしょうか。
小池:そうですね、実は大学までは特に絵の勉強をしていたわけではなく、趣味で描いていたのですが、大学4年の時にやはり絵描きになりたい!と思って就活を始めたんです。スクウェア・エニックスは2社目なのですが、1社目はイラスト制作の会社で2年間働いていました。充実した2年間でしたが、ゲームが好きだったので、ゲームを作っている会社で働きたいと思ってスクウェア・エニックスへ入社しました。当時、板鼻利幸さんがアシスタントを求めていらっしゃったので、そのポジションでお仕事することになりました。
―入社されてからは、板鼻さんとお仕事をされる機会が多かったのでしょうか。
小池:はい、基本的には描いたものを板鼻さんに確認してもらいつつ、デザインを仕上げていく形をとっていました。板鼻さんがキャラクターデザインをした『メビウス ファイナルファンタジー』の妖精エコーの衣装デザインや、主人公ウォルのジョブデザインなどを担当していました。また、グッズのデザインも担当することがあり、チョコボのトランプの絵柄も、いくつかは私がイラストを描いています。
▲小池氏制作のチョコボトランプのイラスト
そして今回の『FF-TCG』の描き下ろしのお話は、このチョコボのトランプのお仕事がきっかけでいただいたんです。先に板鼻さんが『FF-TCG』向けに描き下ろし(詳しくはこちら)を描いていたので、「小池さんにも描いてもらえないか?」とお声がけいただきまして。元々FFシリーズは好きで、『ファイナルファンタジーVII』から『ファイナルファンタジーX』あたりまでは遊んでいたので、依頼をいただいた時はすごく嬉しかったです!
―今回、FFシリーズに登場するモンスターを描き下ろしされていますが、どれもFF界では有名すぎるモンスターばかりです。どういったことを意識して描かれましたか?
小池:依頼を受けた時にまず考えたのは、モンスターのオリジナルのデザインに忠実に描こうということでした。誰も見たことがない私独自の「ボム」や「プリン」を描くつもりは全くなかったです。その一方で、ラインナップの中にはすでに『FF-TCG』でカードとなって登場しているモンスターもいたので、それらとの差別化は図りたい、と思っていました。そこで、「バトル中ではないモンスターの様子」を想像して描こうと考えました。
ボムは火山地帯に住んでいて、自爆も、「蛇の脱皮」くらいの感覚で日常の一部として起こっているんじゃないかと想像してみたり・・・、あとはとにかく顔を凶悪に描こうと思っていました(笑)。今回の描き下ろしの中では一番、自分の中のイメージをうまく表現できたかなと思っています。
このプリンは、誤って流氷の上に落ちてしまって、流されて困っているところです。上空に飛空艇が見えて、「気づいて!行かないで―!」みたいな(笑)。
ズーは、自分の中で「怖いモンスター」でした。ゲーム中に出てくる時も大きいですし……なので、そこを表現できるように描きました。獲物視点で、狩られる最期の瞬間……この直後暗転、みたいなイメージです(笑)。
サハギンも、ズーと同じく狩りの最中をイメージして描きました。
今回の描き下ろしはモンスターということで、可愛くならないように描きたかったのですが、クァールについては趣味が出てしまい、可愛くなってしまいました……。個人的にチーターがすごく好きで、顔つきがややチーターっぽくなっていると思います。こんなのクァールじゃない!と言われるんじゃないかと、ひやひやしながらの納品でした(笑)。
ゴブリンは、『ファイナルファンタジーXI』のゴブリンのように例外もいますが、不気味な印象が強いので、逆に可愛いところを描きたいと考えました。洞窟を探検していたら、食事中のゴブリンに遭遇……みたいなイメージです。イラストでは結構暗くなっているのでわかりにくいかもですが、よく見るとかわいらしい顔つきをしています。
―チョコボのトランプの絵と比べて、かなり作風が変わっているように見えますが、どのようにテイストを決められたのでしょうか。
小池:そうですね、チョコボも今回の描き下ろしも、私の本来の作風ではないのですが、「好きに描いてください」と言われたこともあり、今までやったことのないタッチに挑戦してみようと考えました。そもそも板鼻さんのアシスタントをしていたこともあって、彼の作風に寄せた絵を描く機会が多かったので、新しいことを試せる良い機会でした。意識したこととしては、数あるカードの中で目立つよう、明暗が強くつくように描こうと思っていました。また、先に描き下ろしをされた松田俊孝さんのイラスト(詳細はこちら)を見ていたので、あえて描き込み過ぎないように意識もしました。私は基本的に描き込み過ぎてしまうタイプなのですが、松田さんの絵は描き込みの強弱がはっきりしていて、自然に見て欲しいところに目が行くようになっているんですよ。本当にすごいなあと……。そういう絵を描けるようになりたいと思っています。
―苦労された点はありましたか?
小池:新しい描き方を探りながら描いていたので、完成イメージがない状態で進めていたところでしょうか。試行錯誤を重ねてボムを良い感じに仕上げることができたので、ようやくそこに合わせて他も仕上げていこうという風になりました。クオリティとテイストを統一するために、6枚すべてを同時に進行していました。順番に描いてしまうと、最初に描いたものと最後に描いたものの仕上がりが、全く異なってしまうんです。
―『FF-TCG』の描き下ろしならではだったことはありましたか?
小池:ほぼ全てがそれまでの仕事とは違ったのですが(笑)。特に大きかったのは、これ以外の仕事は必ず板鼻さんのチェックを通していたんですね。なので、制作の基準も、板鼻さんのチェックを通るかどうか、だったんです。でも今回の描き下ろしについては100%私の裁量で進めた初めてのものだったので、そこは大きな違いでした。あとは通常のお仕事ではデザイン業務が多く、制作したアートがそのまま外に出るということはあまりなかったので、実際にカードになったらこのサイズ感になる、みたいなことも考慮しつつ進めました。さらにこれこそ『FF-TCG』ならではかもしれませんが、先日何かの大会の動画で私の描き下ろしたカードを使われている方がいて、やはり実際に使われているのを見ると嬉しくなりました。ぜひたくさん使っていただけたらと思います!
―今後、描き下ろしをしてみたいタイトルはありますか?
小池:実は今、すでに次回の描き下ろしの制作を進めているのですが、個人的に『ファイナルファンタジーX-2』がとても好きなので、機会があれば描き下ろしてみたいです!もともと『ファイナルファンタジーX』が大好きだったのですが、初めてFF関連のデザインで感銘を受けたのが、ルールーの衣装デザインでした。
スカートと思いきや、実は前の部分はベルトになっているんですよね。それに気づいた時、「FFのデザインってすごい!」と思ったのがとても印象に残っています。
あとは『FFX-2』には「ドレス」と呼ばれる能力のついたコスチュームがあるのですが、パインの白魔導士デザインがすごく好きでした。パインというキャラクターを白魔導士に落とし込むのに、こんな風に大胆に料理するのかと思いました。個人的に好きなキャラはアーロンとユウナですね。
―今後出てくる描き下ろしイラストも楽しみにしています!本日はありがとうございました。
次回は『ファイナルファンタジーIV』『ファイナルファンタジー レジェンズ 光と闇の戦士』の描き下ろしを担当されたオグロアキラ氏のイラスト紹介&インタビューをお届けいたします。お楽しみに!
『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第1回:松田俊孝
『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第2回:伊藤龍馬
『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第3回:板鼻利幸
『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第4回:ロベルト・フェラーリ
小池紅美子氏描き下ろしの「ボム」が壁紙になりました!
■デジタルコンテンツ(壁紙)
- アイテム名 : 描き下ろしイラスト『ボム』壁紙
- 交換条件 : (有効期限内)何度でも
ファイナルファンタジーシリーズに登場するキャラクターや召喚獣を駆使して、1対1で対戦するカードゲーム。お馴染みのキャラクターのカードを集めるコレクションとしての要素だけでなく、ルールはシンプルながら奥の深いゲーム性による、カードゲームとしての面白さが最大の魅力。
公式イラストレーターによる描き下ろしイラストも大好評!