『FF-TCG』描き下ろしイラスト紹介 イラストレーターインタビュー第2回:伊藤龍馬
世界中で遊ばれているアナログTCG、『ファイナルファンタジートレーディングカードゲーム(FF-TCG)』には、ファイナルファンタジーシリーズからたくさんのキャラクターやモンスターが登場しています。懐かしいイラストがカードになって登場している一方で、実は、『FF-TCG』のために描き下ろされたオリジナルのイラストが多数収録されています!
本特集では、収録されているイラストをイラストレーターへのインタビューを織り交ぜながらご紹介します。さらに、イラストの一部を壁紙としてFFポータルアプリにて配信いたします!
今回は『FF-TCG』向けに『ファイナルファンタジータクティクス A2 封穴のグリモア』の描き下ろしを担当されているスクウェア・エニックスの伊藤龍馬氏、そしてマーチャンダイジング事業部『FF-TCG』担当の松山氏にお話を伺いました。
伊藤龍馬プロフィール:
ファイナルファンタジーシリーズでは『ファイナルファンタジーIX』『ファイナルファンタジーXII』などに携わり、『ファイナルファンタジーXII レヴァナント・ウィング』ではメインのキャラクターデザインを手掛ける。『クリスタル・ディフェンダーズ』『ファイナルファンタジータクティクスアドバンス』『ファイナルファンタジータクティクス A2 封穴のグリモア』でもキャラクターデザインを担当。
―今回伊藤さんが描き下ろしを担当された『ファイナルファンタジータクティクス A2 封穴のグリモア(以下FFTA2)』ですが、『FF-TCG』の景山プロデューサーに依頼の理由を伺ったところ、彼の一番好きなFFタイトルが『FFTA2』だったので、ぜひ描き下ろしが欲しかった、とのことでした。お話が来てから、どのように制作を進められたのでしょうか。
松山:今回9枚のカードイラストを描き下ろしていただいたのですが、伊藤さんの絵はすでにテイストが確立されていたので、イラスト単体だけでなく9枚で連作のようなものにしてみませんか?と発注の際に提案をしました。
伊藤:そのお話を受けて、背景にテーマカラーを敷いたポップなテイストに統一してみました。またキャラクターを描くにあたり、ゲーム中では普段見せないような、彼らの日常のひとコマを描けたら面白いかなと思っていました。急にカメラを向けられた時のような表情を切り取れないかと。特にイルーアについてはゲーム内ではかなりクールなキャラなので、思い切って柔らかく微笑んだ表情で描いてみたんですが、さすがに『FFTA2』チームの監修でリテイク指示があり、クールな印象を保つ形になりました。
あとは海外のプレイヤーも多いということだったので、遊び心として吹き出しのセリフを入れてみたりもしています(笑)。
―もともと、オリジナルの『FFTA2』でキャラクターデザインを担当されていた伊藤さんが今回描き下ろしをされたということですが、何か苦労された点はあったのでしょうか。
伊藤:そうですね、実は『FFTA2』のキャラクターはコラボ等で割と絶えず描いてはいたので、正直ほとんど苦労はなかったですね。今回描き下ろした『FFTA2』のイラストもかなり原作を意識していて、オリジナルの『FFTA2』から離れすぎないように描いています。でも松山さんからは、もっと自由に描いていいんですよと言われていて、そこでやや葛藤がありました(笑)。なので実は、この次の描き下ろしからはどんどんテイストを変えていっています。
―なるほど、それで日本選手権“Masters”のキービジュアルとして描かれたイラストは、テイストががらりと変わっているのですか?
伊藤:まさにそうなんです。カードイラストの方のキャラクターとは全然顔つきが違うのですが、これというのも昔、自分の絵の先輩である吉田明彦さん、皆葉英夫さんから「肌には影を入れないほうがいい」と教えを受けていたので、ずっと避けるようにしていたんですね。それが今回、がっつり影が入り、この教えと真逆をいってしまったわけです(笑)。でもこの一枚は自分の中でも代表作と言えるような出来に仕上がったので、挑戦して良かったと思っています。また色彩もモノクロで、ルッソの帽子だけに赤を入れるという大胆なことをしているのですが、これにOKを出してくれる勇気もすごいなと……。
松山:担当としては、せっかく『FF-TCG』用に描き下ろしてもらうので、伊藤さんの“新しい絵”を生み出していけないかと思っていますね。
伊藤:そういえば、このグリモアは後から追加したのですが、松山さんに密度感を気に入ってもらえました。
松山:いわゆる“ペン画”というか、塗りも全てペンで入れている描き方が素敵ですよね。ちょっと古臭いかもしれませんが、ファンタジー感も増す気がしています。
伊藤:この密度感も自分の絵にはなかったものでした。モーグリのデザインもそうなのですが、もともと線の少ないものがすごく好きだったので、線の密度を減らすことの難しさに挑戦をしてきたんです。また『FFIX』や『FFXII』での経験を経て、どうすれば3Dモデルにしたときに映えるか、ということも計算して描いていました。……だったのですが、今やりたいことは真逆で、線を増やす方向にどんどん寄っていっています(笑)。
―『FF-TCG』の描き下ろしならではだったことはありましたか?
伊藤:スケジュールに余裕があることですね。やはりゲーム開発向けに描く絵はスケジュールがきっちり決まっていて、締め切りに追われることが多いのですが、『FF-TCG』はかなりの余裕をもったスケジュールで描くことができるので、新しいことを試してみたり、試行錯誤する時間がありました。
―『FFTA2』で気に入っているキャラクターはいるのでしょうか。
伊藤:モンブランですね。『ファイナルファンタジータクティクスアドバンス(以下FFTA)』から登場しているのですが、その段階ではモーグリの6兄弟ということは決まっていたものの、ノノとふたりだけの登場でした。その後『FFXII』でやっと6兄弟全員が登場するのですが、やはり最初にデザインしたモンブランに愛着があります。
―描き下ろしをするにあたり、『FFTA2』開発当時を思い出されたりしたのでしょうか。
伊藤:入社前の話になるのですが、僕は『タクティクスオウガ』が一番好きなゲームでして。それを作っていた松野泰己さんの下で働きたい!と思っていました。でも、当時の僕は若いだけの世間知らずで生意気な、松野さんに会うにはまずは名前を売ってからだ、などと考えていた超ド級の痛いヤツでした(笑)。ですが運だけはすさまじく持っていたようで、当時のスクウェアに入れてなおかつ、クエストにいると思っていた松野さんとそのスクウェアで合流することになり、さらにはその松野さん本人から、『FFTA』のメインのキャラデザをやらないかとお声がけいただき、一緒に仕事をするようになったんです。思い描いていた以上にとんとん拍子に話が進み、20代の自分はまさに“シンデレラボーイ”でした。
―『FFTA2』だけではなく、今後も『FF-TCG』に伊藤さんの描き下ろしが増えていくと伺っております。今後の抱負はありますか?
伊藤:松田俊孝さんの描き下ろしを見たとき、単純に「すごい絵があがってきた」と思ったんです。なので僕も、「誰々が描いた絵」ということではなく、一枚の絵としてすごいと思われるものを届けていきたいです。
―今後出てくる描き下ろしイラストも楽しみにしています!本日はありがとうございました。
次回は「FFマスコットキャラクター」『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル リング・オブ・フェイト』の描き下ろしを担当された板鼻利幸氏のイラスト紹介&インタビューをお届けいたします。お楽しみに!
『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第1回:松田俊孝
伊藤龍馬氏描き下ろしの「アデル」が壁紙になりました!
■デジタルコンテンツ(壁紙)
- アイテム名 : 描き下ろしイラスト『アデル』壁紙
- 交換条件 : (有効期限内)何度でも
ファイナルファンタジーシリーズに登場するキャラクターや召喚獣を駆使して、1対1で対戦するカードゲーム。お馴染みのキャラクターのカードを集めるコレクションとしての要素だけでなく、ルールはシンプルながら奥の深いゲーム性による、カードゲームとしての面白さが最大の魅力。
公式イラストレーターによる描き下ろしイラストも大好評!