『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー
第6回:オグロアキラ
世界中で遊ばれているアナログTCG、『ファイナルファンタジートレーディングカードゲーム(FF-TCG)』には、ファイナルファンタジーシリーズからたくさんのキャラクターやモンスターが登場しています。懐かしいイラストがカードになって登場している一方で、実は、『FF-TCG』のために描き下ろされたオリジナルのイラストが多数収録されています!
本特集では、収録されているイラストをイラストレーターへのインタビューを織り交ぜながらご紹介します。さらに、イラストの一部を壁紙としてFFポータルアプリにて配信いたします!
『FF-TCG』向けに『ファイナルファンタジーIV』『ファイナルファンタジー レジェンズ 光と闇の戦士』の描き下ろしを担当されているオグロアキラ氏に、今回の描き下ろしについてお話を伺いました。
オグロアキラ プロフィール:
FFシリーズではニンテンドーDS版『ファイナルファンタジーIV』や『ファイナルファンタジーIV THE AFTER 月の帰還』、『ファイナルファンタジー レジェンズ 光と闇の戦士』にてキャラクターデザインを手掛ける。その他、『ファイナルファンタジーX』や「半熟英雄」シリーズにも携わる。
―まずオグロさんご自身のことについて、伺っていけたらと思います。これまでのお仕事について教えていただけますでしょうか。
オグロ:スクウェア・エニックスに入社する前は、10年ほどフリーのアニメーターとして活動していたのですが、入社後は『ファイナルファンタジーX』のストーリーボードのデザインを担当したり、時田貴司さんに誘われて「半熟英雄」シリーズのキャラデザインをやったりしていまして、その流れで『ファイナルファンタジーIV』のリメイク、ニンテンドーDS(以下、DS)版にも関わるようになりました。
―アニメーション業界ご出身ということで、ゲームのお仕事がアニメのお仕事と大きく違うところはあったのでしょうか。
オグロ:ゲームはある程度最終段階まで行っても、巻き戻しが発生することがあることでしょうか。アニメではそれは絶対にないので……。最初こそ戸惑いはありましたが、ゲームはそういうものなのかなということで、慣れていきました。ただゲームのお仕事をしている間もアニメーションのことは考えていて、やっぱり動いている絵を描きたかったからという理由で、今はアニメーションのお仕事中心に戻っています。
―今回の『FFIV』の描き下ろしについて伺っていけたらと思いますが、DS版『FFIV』のキャラデザインは当時、どのように進められたのでしょうか。
オグロ:『FFIV』には天野喜孝さんによるデザインがあったので、それを元にキャラを描き起こしていきました。特にプレッシャーを感じるようなことはなかったのですが、天野さんの絵のニュアンスや、色彩感覚を残すことは意識していました。ただ天野さんの絵で細部が描かれていない部分があったりして、そこは自分が作っていく必要があったので大変でした。特に、ゼムスなんかは天野さんの絵を見ても、構造がどうなっているのかわからなかったので、かなり苦労した記憶があります(笑)。
他にデザイン上気をつけていたのは、立体にしやすいように、情報量を最低限に抑えていた点ですね。実際の作業としては、3Dモデルの制作側とのすり合わせに一番時間をかけていました。頭身はどれくらいにすれば一番見映えが良いかを、デザインから3Dモデルに起こし、ゲームに入れてみてバランスをチェックする、という作業を繰り返して調整を行っていました。中でもカインは良いバランスを見つけるのが大変でしたね……。逆にパロムとポロムのデザインはわかりやすくて、すぐにできました。
▲DS版カインデザイン(左)、DS版カインポリゴンモデル(右)
▲DS版パロム・ポロムデザイン
▲DS版パロム・ポロムポリゴンモデル
服のデザインについても、全体のバランスを考慮して見た目が良くなることを第一にしていたので、必ずしも天野さんの絵と全く同じにはなっていないと思います。
―今回の『FFIV』描き下ろしイラストは、どういったコンセプトで描かれたのでしょうか。
オグロ:まとまった枚数を一気に描くお仕事だったので、まずはテイストを決めてしまおうと考えました。ハイライトを大胆に入れてみたり、陰影をハーフトーンで表現したりと、実際のカードの大きさになった時にまとまって見えるよう、計算して描いています。あとは、基本的に一枚のイラストにしたときに映えることを重視して描いていますね。このアングルでポーズだったら、この肩の飾りはもっとでかいほうがいいとか、髪の形を変えてしまったり、あえて元のデザインを変えてしまう時もありますね。そこはアニメーターとしての経験が影響している部分かもしれません。
―続いて『ファイナルファンタジー レジェンズ 光と闇の戦士(以下、FFレジェンズ)』の描き下ろしについて伺っていけたらと思いますが、オリジナルのキャラデザインは当時どのように進められたのでしょうか。
オグロ:パーティーキャラが光の戦士と闇の戦士に分かれていて、という設定は最初からあったのですが、そのままのメンバーで行動するわけじゃなくて、パーティメンバーが入れ替わったりする。さらにソールとグレイブ、ディアナは幼馴染で、ダスクとアルバは双子、という風に関係性もたくさんあったので、そのあたりも考慮してデザインを進める必要があったのは大変でした。その意味ではパーティーキャラ以外のサブキャラや敵キャラの方が、個別に考えられたので楽ではありましたね。『ファイナルファンタジーX』の開発で吉田明彦さんや直良有祐さんの絵を見てきて、「FFの世界観」がわかったところでこの『FFレジェンズ』のキャラデザをしていたので、「FFらしさ」を出せるようには意識してデザインしていましたね。
鎧をまとったキャラも登場しますが、社内で過去のデザイン資料を見て、“FFシリーズに出てくる鎧”を勉強して描きました。一番苦労したのは、“人造生命体”のアルジイですね……。基本的に、人物の方が得意なので(笑)。
キャラクターたちは実際のゲーム内ではドット絵となって登場するわけですが、メインの色を決めるなど、ゲーム画面で見たときに一発で「このキャラだ」とわかりやすくなるようにデザインしています。そういう意味では雷のシャンゴはとてもカラフルだったので、ドットに起こすのは、当時担当されていた渋谷員子さんも大変だったんじゃないかと思います(笑)。
―アルバの服装などはそれまでのFFシリーズでも見ないテイストかと思いますが、どういったところから着想を得ているのでしょうか。
オグロ:海外のファッションショーを見たり、ファッション雑誌を読んだりして、参考にしています。アルバのスカートのシルエットも当時ファッションショーを見ていて、膨らんだシルエットのデザインにしようと思いつきました。あとは竜騎士の姿をしたバルバラに、裏が赤いハイヒールを履かせたりなどもそういったところからの発想でしたね。
―特にデザインが気に入っているキャラは誰でしょう?
オグロ:風のヴァータですね。全く悩むことなく完成までいった記憶があります。イメージとしては「遠山の金さん」で、服は和のテイストで葉っぱや花をあしらって、ポーズも粋な感じにしています。シナリオでも最終的には主人公たちに協力するようなキャラになっていたと思います。
―今回の『FFレジェンズ』描き下ろしイラストのコンセプトは何でしょうか。
オグロ:基本的に自分の描きやすい形で描かせていただきました。セーラのポーズは、オリジナル当時の章イラストのポーズを踏襲する形になったのですが、これは特に見て描いたわけではないので、記憶の中のイメージが一致していたのだと思います。
▲今回の描き下ろし(左)、オリジナルの章イラスト(右)
この章イラストは、当時の自分にとっては今まで描いたことのない種類のものだったので、そのまま練習になりましたね。特に背景を描くのが大変だった記憶がありますが、章ごとにイラストがあると遊ぶ側もイメージがわきやすくていいですよね。
この光の戦士の4人を描いた後に、発注サイドから「もっとアップで描いて欲しい」と言われたので、Opus VIIIに収録されている闇の戦士の4人はアップになっています(笑)。ディアナは可愛らしかったり、それぞれの性格を反映するようなポーズで描いています。
―今回の描き下ろし以前にも、『FFIV』や『FFレジェンズ』のキャラを描き下ろす機会はあったのでしょうか。
オグロ:『ロード オブ ヴァーミリオン』向けに一度、『FFIV』のキャラを描き下ろしましたね。あの時は発注側からのリクエストもあって、リディアを頑張って可愛く描いたのを覚えています(笑)
―今後、描き下ろしてみたいキャラクターや他のFFシリーズはありますか?
オグロ:今、実は次回の描き下ろしを進行中ですが、やはり自分がデザインしたシリーズのキャラが一番やりやすいと思いますね。『ファイナルファンタジーIV THE AFTER 月の帰還』のレオノーラはデザインが気に入っているので、もう一度描いてみたいです。
―今後出てくる描き下ろしイラストも楽しみにしています!本日はありがとうございました。
次回は『ファイナルファンタジー・クリスタルクロニクル エコーズ・オブ・タイム』の描き下ろしを担当された泉沢康久氏のイラスト紹介&インタビューをお届けいたします。お楽しみに!
『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第1回:松田俊孝
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『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第4回:ロベルト・フェラーリ
『FF-TCG』描き下ろしイラストレーターインタビュー第5回:小池紅美子
オグロアキラ氏描き下ろしの「ディアナ」が壁紙になりました!
■デジタルコンテンツ(壁紙)
- アイテム名 : 描き下ろしイラスト『ディアナ』壁紙
- 交換条件 : (有効期限内)何度でも
ファイナルファンタジーシリーズに登場するキャラクターや召喚獣を駆使して、1対1で対戦するカードゲーム。お馴染みのキャラクターのカードを集めるコレクションとしての要素だけでなく、ルールはシンプルながら奥の深いゲーム性による、カードゲームとしての面白さが最大の魅力。
公式イラストレーターによる描き下ろしイラストも大好評!