『ファイナルファンタジーVI』
30周年記念インタビュー
今年で『ファイナルファンタジーVI』は30周年!
これを記念して、『ファイナルファンタジーVI』でキャラクターデザインやモンスターデザインを担当した野村哲也氏のスペシャルインタビューをお届けいたします!
「ファイナルファンタジー」シリーズには『ファイナルファンタジーV』から参加し、『ファイナルファンタジーVII』ではキャラクターデザインを担当。『ファイナルファンタジーVIIリバース』ではクリエイティブ・ディレクターを務める。
―『ファイナルファンタジーVI』の開発ではどのような部分を担当されていたのでしょうか。
野村氏(以下、野村) 『ファイナルファンタジーVI』ではメインはモンスターデザインを担当していて、バトルの演出もやっていました。昔はスタッフの人数も多くなかったので、全員がお話のアイデアやこういうことをやりたいという企画書を書いていたんですよね。それを持ち寄って、坂口さん(坂口博信氏。『FFVI』プロデューサー)を中心にどれを採用するかという会議をしていました。なので初期設定のパーツについてはいくつか自分のアイデアが採用されたものもありました。
―今とはだいぶ作り方も違ったのですね。ちなみに野村さんのアイデアが採用されたのはどのあたりなのでしょうか。
野村 冒頭のオープニングシーンの、雪の中を魔導アーマーが歩いてくるナルシェの流れや世界観の部分、氷漬けの幻獣といったものですね。あとはシャドウやセッツァーの設定については自分のアイデアがベースになっています。当時はシナリオの作り方が特殊で、みんなで部分的なアイデアを持ち寄ってそこから何を採用するかを坂口さんが決めてまとめる、という形でした。職種関係なく、各々やりたいことを提案するような感じですね。次の『ファイナルファンタジーVII』の時も最初はその形だったんですが、野島さん(野島一成氏。『FFVII』シナリオライター)が参加してからは一人が担当するように変わっていきました。自分は『ファイナルファンタジーVI』で結構アイデアを拾ってもらえて、その結果『ファイナルファンタジーVII』ではメインで設定周りをやらせてもらえることになりました。
―ご自身がデザインをした中で、お気に入りのキャラクター/モンスターは誰でしょうか。
野村 自分がしっかりドットを打ち終えた最後の物は、ラストの神々の像からのケフカなのでそこは気に入っています。
―ラスボスの神々の像は画面を三分割して登場するという斬新な演出がありましたが、これは最初からそのように想定されていたのでしょうか。
野村 特に想定はなくて、デザインに企画を合わせてもらった形です。基本的に当時はそこまで細かい設定があってデザインへ入るわけではなかったんです。ラスボスということでとにかく大きいものを作りたくてあのデザインが生まれました。
モンスターデザインは『ファイナルファンタジーV』でもやっていたのですが、その時は自分と先輩で担当していて、『ファイナルファンタジーVI』の時も自分+後輩二人でやっていました。やはりボスはみんな担当したがるもので、『ファイナルファンタジーV』の時は先輩が譲ってくれたので自分が担当させてもらいました。エクスデスも色々とくっついて大きかったですが、それより大きいものを作りたいという思いがあって、その結果が『ファイナルファンタジーVI』の神々の像で爆発した感じです。
そもそも当時はいわゆるデザイン画を起こしてからドットを打つというのはあまりみんなやっていなかったのですが、自分はそのやり方でやっていました。神々の像もスケッチブックに一画面分ずつ描いて、繋がるような感じのデザイン画を描いていました。
▲スケッチブックに描かれた「神々の像」デザイン画(を縦に3枚並べたもの)
基本的にはデザイン画を元に目で見てドットに起こすということをやっていたのですが、神々の像だけはデザイン画をスキャンしてドットに調整するというやり方をしました。当時は色数にも制限があるのでまず白黒の線画で取り込んで、結構荒いものにはなってしまうんですがそれを手作業で整形と着色をしていくという感じですね。これについては「やっと新しい技術を手に入れたぞ、今までデザイン画描いててよかった!」と思いましたが、『ファイナルファンタジーVII』からポリゴンになって、この技術を再度使うことはなかったです(笑)。
▲デザイン画と完成ドット
―ケフカ(最終形態)のデザイン画について、神々の像のものと比べるとシンプルで、ドットの段階でかなりディテールが追加されているように見えますが、どういった違いがあったのでしょうか。
野村 時間がなかったので(笑)。開発の最後に作っていたものだったので神々の像で力尽きて、なんとか完成させました。
―『ファイナルファンタジーV』にもモンスターデザインで参加されていたとのことで、ギルガメッシュも野村さんのデザインですよね。
野村 はい、ギルガメッシュについてはバトル担当の伊藤さん(伊藤裕之氏。『FFV』ディレクター)がやりたいことがあるから、といって自分がデザインしたギルガメッシュを連れて行ったと思ったら、とんだ面白キャラになっていました。シナリオだけでなくバトル内でもストーリーを作れるんだ、というところでギルガメッシュはすごく特別だな、と。バトルの中でドラマを作れるというのは個人的に大きな変革でした。
―キャラクターのデザインについてはどういった部分を担当されていたのでしょうか。
野村 パーティキャラのドット絵のイラスト化は自分が担当しました。あとはイベントシーンのイメージを描いたり、説明書などに載っていたデフォルメキャラの元イラストも描いています。当時はみんなPCで企画書を書いていたんですが、自分は広告の勉強をしていたこともあってプレゼン資料風に、文章は手書き、デザイナーなので挿絵を入れたり文字もレタリングで書いてみたりと目立つようなものを作っていたのですが、それを見ていた坂口さんから『ファイナルファンタジーVI』向けに描いてみろと言われて描いたものです。
―お気に入りのキャラクターはいますか。
野村 自分が深く関わったシャドウ、セッツァーは思い入れがあります。出番がすごく多いわけではないのですが、印象的なキャラクターだと思います。
―シャドウについてはイベントの発生に条件があって、本編で必ずしも触れられるわけではない形でストーリーが描かれていますよね。
野村 そうですね、シャドウの宿屋イベントは自分がやりたいと言ってあのようになりました。(魔大陸崩壊時に)待たないと戻ってこなくなるのは北瀬さん(北瀬佳範氏。『FFVI』ディレクター)ですね。北瀬さんは所々たまに残酷で(笑)。
―さすらいのギャンブラー・セッツァーも非常に魅力的なキャラクターです。
野村 セッツァーみたいなキャラが好きなんですよね。やる気満々ではないけど実は熱いキャラというか。
当時は『ファイナルファンタジーV』用に作った企画でボツったものが『ファイナルファンタジーVI』で使われたりというようなことがあって、シャドウやセッツァーの原型も『ファイナルファンタジーV』制作当時に考えていたものです。シャドウの設定についてもベースだったり犬を連れてるみたいな部分のアイデアは自分でしたが、すべてを作ったわけではなく他の人の考えた設定も足されたりして出来ていきました。人数が少ないからそういう作り方ができていたというのはあると思います。当時は企画担当、バトル担当、デザイン担当くらいの区分けしかなかったので。
―各々企画を考える中で、その後のキャラクターの原型が生まれたりしていたのですね。
野村 はい、今回の作品には合わなかったなどの事情で、リフレッシュして改めて調整するみたいなことはよくありました。『ファイナルファンタジーVIII』のイデアも、『ファイナルファンタジーVI』か『ファイナルファンタジーVII』の頃にデザインを描いていました。それまでのシリーズのラスボスは男性しかいなかったので、女性の、魔女がラスボスという案はどうかと思って作っていたものです。
―『ファイナルファンタジーVI』制作当時の印象に残っているエピソードがあれば教えてください。
野村 今では考えられないですが、自分の家に後輩が泊まりに来て一緒に企画書作ったり、深夜に会社でCDのボリューム上げて同僚たちと仕事したり、合宿感覚で制作現場が楽しかったなという思い出があります。企画より先にモンスターやキャラクターのデザインを描いたり、やりたいことを企画書に落とし込んだりして、スキを見はからって北瀬さんのところに提案しに行っていましたね。当時は意識していませんでしたが、常に面白いものを作るためのことばかり考えていたと思います。そういう面でやる気だったり実力を評価してもらえて、その後大きな仕事を任せてもらえたのかなと、勝手に解釈しています。
―最後に『ファイナルファンタジーVI』30周年にあたっての想いがあればお伺いできますでしょうか。
野村 『ファイナルファンタジーVI』はドットでの最後のナンバリング「ファイナルファンタジー」で、当時のドットでできることの限界に近いところで作られていて、その最終地点だったように思います。自分も元々はドッターとして、この作品に参加できて良かったなと思うと同時に、『ファイナルファンタジーVI』は愛されているなと感じることも多くあります。
一方で、『ファイナルファンタジーVI』は当時の制限がある中でできる限りのことはやったつもりですが、まだやれたかも?という、心残りを感じる作品ではあるなと思っています。他ではあまりそういうことはないのですが、『ファイナルファンタジーVI』だけは何か心に引っ掛かりが残っているタイトルです。
「ファイナルファンタジー」は『ファイナルファンタジーVII』から大きく変わったと思っていますが、それまでの集大成としての『ファイナルファンタジーVI』が特別な存在になるのは当然なのかなと。『ファイナルファンタジーVII』から入った方、ここで離れてしまった方、ずっと続けて遊んでくださっている方、様々いらっしゃると思いますが『ファイナルファンタジーVI』と『ファイナルファンタジーVII』は間違いなく大きな分岐点だったわけで、『ファイナルファンタジーVI』に対する思い入れ(の強さ)という意味では当時のプレイヤーのみなさんと同じ感覚なのかなと思います。
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