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祝『ファイナルファンタジーIV』30周年!
スペシャルインタビュー

7月19日に発売から30周年を迎える『ファイナルファンタジーIV』、ゲームデザインとシナリオを担当された時田貴司さんに30周年を迎えた思いや、制作当時を振り返っての思い出などをお伺いしました!

―『FFIV』が30周年を迎えた今のお気持ちはいかがでしょうか?

時田:もう30年という感じなんですが、ファイナルファンタジーシリーズ自体も34周年ですよね。まさかこんな長くゲーム業界が続くとは、スクウェアがエニックスと合併するとは、ましてやまだここで仕事を続けているとは思っていなかったです。スーパーファミコン(以下、SFC)の1作目だった『FFIV』はゲーム業界が成長する中で出てきたタイトルなので、そこから30年というのは自分も業界を辞めずによく頑張っているなと思いますが(笑)、長く皆様に愛されるタイトルになっていて非常に感慨深いです。

―『FFIV』の開発当時、時田さんはゲーム業界でお仕事を始められて何年目くらいだったのでしょうか?

時田:『FFIV』の開発時は26歳、ゲーム業界には18歳からアルバイトで入ったので、8年目になりますね。20歳でスクウェアのアルバイトでグラフィック担当として入り、ドット絵を打ちながらお話のアイディアを考えたりしていて、最初に入った時に作っていたのがMSXの『エイリアン2』、その後に『FFI』のモンスターなどを手伝って『FFII』の開発時には『半熟英雄』を作っていました。その後『魔界塔士Sa・Ga』を作っている時に『FFIII』の開発が動いていて、『FFIV』については最初から参加することになりました。『FFIV』がきっかけで正社員になると同時にジョブもドット絵のデザイナーからゲームデザイナーにジョブチェンジした感じですね。クラスチェンジとジョブチェンジが同時に起こりました(笑)。

―『FFIV』といえば、それまでのFFと比べるとキャラクター性がより際立ったものとなり、ストーリー上でもドラマチックな展開がたくさん入るようになりましたが、坂口さんとどのように作り上げていたのでしょうか?

時田:坂口さんがディレクターだったんですが、プロデューサー的な側面が今思えば多かった気がします。坂口さんがワールドマップや国、大きなストーリーの流れを考えてシナリオのプロットみたいなものを作っていた時に、スタッフみんなでこういうキャラが欲しい、こういうイベントが欲しいというアイディアを入れていきました。そして実装する時に自分がひとりでキャラを配置したりスクリプトにしたり、セリフを整備したりというようなことをやっていましたね。

―個性的なキャラクターもたくさん登場しますが、最初にできたのはやはり主人公のセシルだったのでしょうか?

時田:どうだったかなあ、でも主人公だし多分そうなのではと思います。暗黒騎士からパラディンになるという設定は最初からあって、そのライバルのカインとヒロインのローザは最初からいた気がします。あとはバランスを考えて、特にFFは老若男女いて、子供がいたらいいよね、双子の魔法使いがいたら白魔道士と黒魔道士で面白いよねという感じでパロムポロムは自分が考えましたね。あとはバラエティ側のキャラというか、ヤンやエッジなども自分のアイディアです。
『FFI』から『FFIII』までやってきて、『FFI』は戦闘シーンを見せるRPGの走りで、『FFII』はキャラクターが立っていてすでにキャラクターとストーリードリブンといったことを確立していました。『FFIII』でジョブチェンジが入ってさらにアップテンポで見せるバトルが出てきた時に、『FFIV』ではやはり『FFI』『FFII』『FFIII』の良さを融合しようというようなところがあって、プレイの節目になるように四天王を入れたりしました、「今どこまでやった?」「今火のカオス」みたいな会話ができるように。そういう意味では『FFI』『FFII』『FFIII』良い所を『FFIV』の中で増幅して使ったみたいなところがあるかなと思います。

―中でも気に入っているシーンはありますか?

時田:すべてが骨身に染みていますね。特に最初のローザが自室に来るシーンなどは、植松さんと一緒に音楽をどのタイミングで流そうとか効果音どうしようかみたいなこともふたりで考えながらやっていたりしました。序盤ということもあって、あのシーンが音も含めた演出をどうしようかということを一番試行錯誤したのではないかと思います。

―FFシリーズの中でも恋愛を描いたのは『FFIV』がはじめてではないかと思いますが、大人向けの感じもあったりと、そのあたりは意識されていたのでしょうか?

時田:坂口さんのプロットからもうその前提だったんですよね。そういえば『FFV』の時はヒロインが2人で、『FFIV』の逆をやりたかったのかな……。『FFVII』もヒロインがふたりいますよね。ユーザーがまた、自分はこっちが好きとか言えるのがキャラクターRPGの魅力だと思いますが、今思うと当時からそうだったんだなと。

―キャラクターの心情、人間性が深く描かれている部分がたくさんありますが、特に人間性が好きなキャラクターはいますか?

時田:全部自分で動かしましたし、セリフも実装と同時に動きと合わせて変えて、みたいなことをしていたので、自分が一旦演じたかのような感覚があるのでみんなすごく好きですね。ローザはもっと個性を描いても良かったかもと思っていて、みんながみんな個性豊かすぎると良くないということで、なんなら怖いって言われるくらい、しっかりしたキャラクターになっています。セシルはあまり積極的なタイプじゃないので、周りの人に引っ張ってもらう必要があって、それが子供のパロムポロムだから、親父替わりのシドだから言えることがあったりして、脇役でドラマを作っていった感じがします。メインはセシルの月の民の物語があり、そこにカインとローザを加えたラブストーリーがありつつ、それ以外は周りの人たちでどうシーンを盛り上げるかというところを注力して作っていましたね。

―絵的にも、かなり動きのあるドットが登場していますよね。

時田:坂口さんが手描きでドットキャラにこんな動きを持たせたらよいのでは、ということで手を挙げる、頷くなどの汎用的なパターンをいくつか考えて、そこから動きがついていきました。シーンを作っていくうちにキャラクターによって性格が出て、ギルバートはほとんどうつむいていたり、ヤンはあまりうつむかないとか、おのずと使い分けができていき作っていて面白かったですね。

容量的にはセリフはすべて入らず、シナリオを揃えたら1/4にしないと入らないくらいのボリュームになってしまったので、うつむきのポーズだったりというのは何かセリフで言わなくともプレイヤーに想像してもらえる間が作れたなと思います。最近のアニメや漫画でもそうですが、説明が過多すぎると思っているんですよね。でも説明がないとわからないという人もいて難しい。そういう意味ではいい感じに想像してもらえる形をRPGに入れることができたのかなと思います。

―ドットのビジュアルで気に入っているキャラクターはいますか?

時田:ドットのビジュアルでいうとやはりカインが好きですね。天野喜孝先生のデザインの時点で頭部の上半分がドラゴンっぽい鎧で覆われていて、下半分は見えているというようなヒーローっぽい感じで、シナリオ的にも肝心なところを背負ったキャラですし。セシルの暗黒騎士のバトルシーンは正直あまりかっこよくはないんですが、それに対してカインの竜騎士はジャンプなどすごくカッコいい。バルバリシアとの戦闘シーンは有名かと思いますが、あそこも捕らわれている間にバルバリシアと何かあったのか……?ということを感じて欲しいなあと思っていました。

―ゴルベーザ四天王をはじめとする敵のモンスターも個性的でした。印象に残っているものはいますでしょうか?

時田:四天王の中でもやはりルビカンテがすごく好きで。戦隊モノの幹部じゃないけど節目節目に現れますよね。四天王はRPG的に属性を加えて特徴づけをしましたが、それらを束ねるのがルビカンテなので強いだけではなくて人格者であり、敵側でありつつも回復してくれたりというところで、そういった部分を表現できないかなと。そういうキャラも一人くらい敵側にいてもいいですよね。スカルミリョーネ、カイナッツォ、バルバリシア、ルビカンテとそれぞれキャラが立っていて、好きな4人組ですね。

―気になっていたのですが、ゴルベーザと四天王の関係性ってどういうものなのかなと。

時田:色々、ルビカンテは魔道士で……みたいな噂とか一説があるみたいですが、実際そこは何も考えていなかったんですよね。今にして思えばレベルですが、結局ゴルベーザも操られているので、四天王たちも最初からああではなかったんじゃないかなと思います。最初からああだったらだいぶ変態というか、どうかしていますよね(笑)。かといってそこのドラマを描いてしまうと、プレイヤーが敵として刀を振り下ろしにくい。あくまで想像ですが、元はちゃんとした人間だったり魔道士だったんだろうなと思います。

―四天王は、ドット絵もカラフルで印象的でしたよね。

時田:そうですね、あとはアクティブ・タイム・バトル(以下、ATB)のバトルだと、ボスの場合途中で絵が変わって体勢が変わるようになったので、マントを脱いだり、津波が出たり、竜巻が出たりというのはダイナミックに描けましたね。そういったバトルシーンでの印象もセットで記憶に残るキャラクターになったのかなと思います。

―「月」をラストダンジョンにした理由はなんでしょうか?

時田:これも坂口さんの初期プロットからあった設定だと思いますね。最初に聞いた時はまず「息できるの?」と思いましたが、あくまで『FFIV』世界の月なのでできるんじゃないか、と(笑)。『FFIV』では地底にも行くし月にも行くので、FFシリーズの中でも広くエリアを冒険している気がします。当時SFが流行っていたこともあり、『FFI』の時に宇宙ステーション的な天空城が出てきているのでそこがより具体的に冒険できるようになったという感じで、坂口さん的には最初から宇宙を舞台にしたかったのではないかなあと思います。

―『FFIV』は『FFI』から『FFIII』の良さを取り入れたというお話もありましたが、逆に変えた部分はあったのでしょうか?

時田:『FFI』はシステマチックなゲームで、『FFII』はストーリードリブンとキャラ育成、『FFIII』は色んなジョブを楽しみましょうというゲームだったのに対して、『FFIV』はストーリーとキャラクターの中でどうジョブやバトルを見せるか、上手くまとめるにはどうしたら良いかを試行錯誤しましたね。
ジョブを冠したキャラクター、たとえば『FFII』の竜騎士のリチャードや海賊のレイラなども出てくる一方で育て方は自由だったのに対して、『FFIV』ではコマンドも含めてこいつはこうだよね、みたいな感じで作っていました。ATBというバトルシステム自体が新しかったため、ジョブやコマンドまで新しくするとわけがわからなくなってしまうので、それらは勝手知ったるものを使うようにうまく融合できたのも、キャラクターがジョブを持っていたからなのかなと思います。そう思うと各キャラも最初にジョブが設定してあって、だからそういう役割をするみたいな流れで出来上がっていった気がします。リディアも子供だけど召喚するから強い、とか。

―『FFIII』の時もパーティメンバー以外のキャラクターは仲間にはなるものの、バトルに参加してはくれなかったですよね。それが『FFIV』ではキャラクターが入れ代わり立ち代わりパーティに加わりますよね。

時田:『FFII』の時に4人目が入れ代わったりもしていたし、本当は『FFIII』でも5人パーティがやりたかったようです。本当はデッシュも一緒に戦う予定だったらしいですね。SFCで5人パーティになったけど、ずっと5人も重いよねということで固定ではなかったです。バトルの人数があれだけフレキシブルに変わるのもドラマとして面白かったかなと思っていて、リディアが途中で参戦してくるところの盛り上がりや、セシルがひとりになった時の孤独感も際立って、すごく緩急がつけられるんですよね。

―バトル中のイベントシーンもたくさん入っていたイメージがありますね。

時田:やはりバトルは見せ場なので、その中にドラマも入れていこうと自然にそういう流れになりましたね。イベントシーンはもちろんこだわっていましたがバトルシーンも力を入れて作っていて、バトルとイベントで切り替わっていく形など、ラストバトルではその集大成を発揮することができたのかなと思います。やはりSFCになってスペックが上がってやれることが増えましたしね。やりたいことがやっとできた、中学生になってお小遣いが増えて欲しいものを買ったみたいな感覚です(笑)。やはり『FFIV』や『FFVII』が愛されているのは、ハードウェアの切り替わりで表現が広がったからこそのドラマが心に残ったのかなと思います。

―ATBを最初にご覧になったときの印象はいかがでしたか?

時田:最初に実装した時には素早い順に動けるというところしかなかったので、何が起こっているのかさっぱりわからず、弱点を考えたりする余裕もなくとりあえず焦ってボタン連打していました……(笑)。これではまずいということになり、そこから試行錯誤して“待機時間”で調整という方向を考えたのかなと。「たたかう」はすぐに行動できるけど、強い召喚や一部の魔法などは発動までに待機時間が発生するといったルールを作って遊びやすくしていった感じですね。
バトルシステムを作っていた伊藤裕之自身はF1を観ていて、周回遅れになっているやつがいるのを見て、素早ければ1ターンに2回攻撃できるけど、遅ければ1回だけ、みたいなシステムを思いついたらしいです。エッジは1ターンに2回攻撃できるけど火力は低い、といった個々のデータを作るルールみたいなところでATBを成立させていったという感じなのかなと思います。

―『FFI』から『FFIII』もそうですが、『FFIV』もかなり難易度が高いゲームでしたよね。一戦一戦が重いと言いますか……。

時田:そうですね、『FFI』は魔法の回数制限があったりして難しい、『FFII』は熟練度システムで元祖サガなのでまあ難しい、『FFIII』はサクサク進んでジョブチェンジもできる、の反面ラストダンジョンが鬼長いという(笑)。『FFIV』のラストダンジョンも雑魚敵でさえ強かったですよね。一戦一戦が重かったのはもしかしたら『FFIV』から、敵のリアクションを取り入れたからかもしれません。プレイヤーの特定の行動に応じて敵がリアクションをしてくるやつですね、例えば火属性の敵に弱点だと思って水属性で攻撃すると反撃が来る、といった感じです。ATBだと通常の攻撃の合間に割込みでその反撃が入ってくるので、難易度があがったと感じられたのかもしれません。

―実際に発売後に難しいという声はあったりしたのでしょうか?

時田:当時はみんなインターネットがない中でリアルで情報交換していたので、試行錯誤をしてもらう前提で作っていたんです。今のゲーム開発ではわかりやすさを重視して、どうやって遊んでもらうかを考えますが、当時はいかにチャレンジャブルなものを作るかを重視していて、時代的にもそういうのがゲームの面白さだったし、ソフトの価格も高かったので長く楽しんでもらいたいという意図もありました。
『FFIII』のセーブポイント無しのラストダンジョンは強烈に記憶に残っていますが、『FFIV』では必ずボス前にセーブポイントを置きました。「ははーん、この後ボスか」という感じで興ざめという意見もありましたが(笑)。あとはダンジョンごとにレベルをあげないとクリアできない階段的なバランスにしていたので、そこは難しく感じられたかもしれません。シルフの洞窟や幻獣の洞窟など、レビテトを習得していないと大変なことになりますよね。これに対して、今はやり直しをいかに無くすかというなだらかなバランスが重視されています。

―ゲーム的にはSFCになり幅が広がった部分がたくさんあったかと思いますが、楽曲についても音数が増え、名曲も多数生まれました。時田さんの好きな曲はどれでしょうか?

時田:色々ありますが、ラストバトルでも流したメインテーマ(「オープニング」)ですかね。冒頭のカインとふたりで城を出ていくところでも流れますが、FFシリーズの中ではある意味ドラクエ的使い方というか、王道的な使い方をしています。あとはそうですね、「愛のテーマ」もすごくベタに入れてみたし、個人的に好きなのはバブイルの巨人の中の曲(「巨人のダンジョン」)ですかね、植松さんの曲の中でも個性的というか、ラストダンジョンにも使ったし緊迫感からはじまって、最後には勇壮になる流れがすごく好きですね。
オープニングで流れる「赤い翼」も、拡大縮小に使ったモード7とも相まって衝撃的で印象深いシーンに仕上がっています。「赤い翼」はラストダンジョンでも流れるんですが、普通にラスダン用の曲を作ってもなあというところで、あえてそこに持ってきています。試練の山でも流れますが、セシルの決意のシーンで流している気がしますね。

―全体的に『FFIV』はかっこいい、勇壮な曲が多いですよね。

時田:グラフィックがパワーアップしたぶん、音楽もどうパワーアップしようかというところで、オーケストラっぽい勇壮なBGMを植松さんも考えて作っていたのではないかなと思います。あとは、それまでのRPGって塔に入ったら塔の曲、みたいな感じで場所によってBGMが決まっていたんですが『FFIV』からイベントのセリフきっかけで曲が変わってそのままバトル突入、みたいな限りなく劇場的な、フレキシブルな使い方にしたからより印象に残ってもらったのではないかなあと思いますね。

―曲を作る際に、時田さんからこうして欲しいなどの注文はされていたのでしょうか?

時田:特にはないですね、まずシナリオがあって、相談しながらも植松さんの方からリディアのテーマは必要だよね、とキャラ別のテーマについても全部作るのではなく取捨選択していました。シナリオの中からピックアップしてバランスをとっていったという形ですかね。

―音楽といえば、8月25日(水)に『FFIV』の30周年を記念したアナログレコード「FINAL FANTASY IV -Song of Heroes-」が発売になります。こちらも監修など参加されているのでしょうか?

時田:まだ中身は聞けていないのですが、選りすぐりの4曲ですね!(A面に新規アレンジ、B面にオリジナル楽曲の計8曲を収録)ジャケットについては担当部署からデザイン案をもらって監修をしました。この天野先生のアートはニンテンドーDS版『FFIV』用の描き下ろしですね。今回のジャケットのデザインは最初キャラだけで魔導船がなかったんですが、いやいや待てと、これはやっぱり魔導船あってこそのこのイラストだし、正方形だったらおさまりとしては今の形がいいかなということで入れていただきました。色味も青と白、セシルのパラディンのカラーイメージに加えて暗黒騎士の色も入ったりで、青系でまとめている中にリディアの緑も映えていますよね。 このイラストを初めて見た時の感想は、男性3人に比べて女性の目線が強いな、と(笑)。

―天野先生の描かれる女性は強さを感じますよね。リディアなんかは実際ゲーム中でも、エッジの尻を叩くような動きをしていましたし(笑)。

時田:そうですね、リディアは僕の好みが表れているかもしれないです(笑)。まあでも一緒に戦うんだから強くないとですよね。このイラストは魔導船が丸いのも良いですね、発注時にも、宇宙船というよりも生物的なものが良いと思い、クジラのイメージでと頼んだところ、結果かなりクジラ感のあるものがあがってきました。最近『FFXIV』に登場した魔導仕掛けの船「ルナホエール」も、クジラをより意識してもらいました。

―強い女性といえば、ヤンの奥さんから渡される「愛のフライパン」の発想はどういうところからだったのでしょうか?

時田:“別れ”というのは強烈なドラマだったので、最初はキャラクターがどんどん死んでいく流れでしたが、坂口さんからそれはゲーム的にどうかということで、生きているメンバーを全員パーティに入れたかったんですよね。その後の移植版では実現していたりするんですが、ただ生き延びるというのは芸がないので、ヤンの場合はこれまた強い女性の(笑)かみさんのところに行くと愛のフライパンをもらって、その力で目覚めるということにしました。ニンテンドーDS版『FFIV』の時に、パーティメンバーが考えていることを喋るという機能を入れたんですが、愛のフライパンを入手したときにセシルは「そうかこれで料理を作れば……!」みたいな勘違いしているセリフをわざと追加してみたりしました。
『FFII』で竜騎士のお城にいる親子が、リチャードと死別した後にフリオニールに剣を託すシーンがありましたが、大事な人のためにアイテムを渡す、というのをやりたくて、ただずっとシリアスだと息が詰まってしまうので、ちょっと笑えるような感じにもしたかったんです。そういう意味ではシドとかエッジがセリフのないシーンでわちゃわちゃしていたりする部分は自分も作っていて息抜きになりましたね。今でこそセクションごとに担当者を分けますが当時は本当にひとりですべて作っていたので、やっぱり飽きてきちゃうんですよね(笑)。自分が作らないとゲームを繋げないというのもプレッシャーで、息抜きというか楽しいこともやらないとという中で、飛空艇の改造シーンなんかは作っていて楽しかったです。

―E3の「SUMMER SHOWCASE」でも発表された『ファイナルファンタジー ピクセルリマスター』シリーズですが、どのように開発が進んでいるのでしょうか?また注目して欲しい点などありましたら教えてください。

時田:今回『FFI』から『FFVI』まで同時開発ということで僕は『FFIV』の監修をしています。基本は当時のドット絵を大事にしたうえで、いかにディテールをやりすぎないかというところに気を付けて作っているなあという印象です。
開発中のビルドを遊びましたが、最初の30分でミストドラゴンを倒せるくらいなので、テンポが非常に良いです。逆に最近のゲームよりもテンポが良いのではないかと。最近の映画やドラマも昔に比べてテンポ感がすごく早いので、個人的に3Dのゲームを遊ぶとテンポ的に辛かったりする中で、昔の2DのRPGはサクサク進むんですよね、途中ダンジョンで躓くかもしれないけども(笑)。ただその難易度は調整してくると思うので、結果的にはハイテンポでめくるめく展開でキャラクターの物語や、バラエティに富んだボスとの戦いが体感できるのではないかなと思います。開発は好調に進んでいるらしいのでぜひ遊んでみてください!

―最後に、『FFIV』のファンのみなさまへメッセージをお願いします。

時田:『FFIV』はFFの中でもリメイクなどの機会に恵まれたタイトルで、個人的には何かそういったお話があればぜひ、とお断りはしていません。古いゲームだからこそ新しい人に遊んで欲しいと思っています。移植やリメイクの他にも続編の「ジ・アフターイヤーズ」も作らせてもらいました。もはや自分のライフワークといっても過言ではないタイトルになっているんですが、新しいハードで出すたびに新しいユーザーさんが入ってきてくれていると思うので親子2、3世代に渡って遊んでいただけているのかなと思うと非常に感慨深いです。まあでも僕の息子は遊んでくれていないんですけどね、フォートナイトしかやらないので……(笑)。
今も続くFF、たとえば『FFXIV』でもコラボしてもらったりして、SFC1作目のFFとしてドラマなどを押し出した部分はFFのすごく大きなエッセンスのひとつになっていると思います。E3の「SUMMER SHOWCASE」で『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』も発表されていましたが、これまたスパイスの効いた、この角度から来たか、という感じで『バウンサー』を作っていた頃のキャラクターの感じを思い出して懐かしいと思っていました。
今回、『FFIV』のピクセルリマスターという形でまた新たな方々に遊んでもらえたらと思います。映像や舞台なんかにすると映えそうですよね、『FFIV』は、宝塚とか(笑)。RPGだからこそド直球のドラマをやったので、今だったらちょっと照れてしまってできないようなところも直球でやっているので、自分の原点というか、やっぱこれだよなと思うものを潔くやっているのを見ると、初心は忘れちゃいけないなと思いますね。

―時田さん、本日はありがとうございました!

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